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【分析】障がいのある方や介助する方を取り巻くアパレル環境
投稿日 2023.02.28 最終更新日 2024.10.28
現在、ノーティカルでは障がいのある方や介助者にもファッションを楽しんでいただけるよう事業者様と共に商品開発に向けて取り組んでいます。
12月27日付「【経営】『インクルーシブデザイン』とは何か。体験会へ参加し、本を読んで考えた。」という記事は、私スタッフSiがその取り組みの中で出会った『インクルーシブデザイン』について書かせていただいたものです。
リンク:【経営】「インクルーシブデザイン」とは何か。体験会へ参加し、本を読んで考えた。
今回は、障がいのある人や介助される方を取り巻くアパレル環境について知ったことを紹介させていただきます。
関連する団体につきましては敬称略で記載させていただきます。ご了承くださいませ。
介助者である知人に話を聞きました。
私には障害のある子供を介助している知人が二人います。
今回調査を始めて最初にその知人二人に話を聞きました。
知人二人は重い知的障害を持つ子供を持つ母親で、身体的障害は無いものの、子供の生活の全てに介助が必要です。
聞く前は、身体的障害は無いからもしかして洋服に対する要望はないかもしれないと思っていました。
しかし、実際に聞いてみると多くの不便さ、要望を聞くことができました。
〜不便さ、要望〜
・ウエストがゴムのみのデザインのズボンが少ない。
・ウエストがゴムでも、その上から紐で結ぶタイプが多く、本人が結べない。
→介助者の手間がかかってしまう。
・ウエストのゴムがズボンに縫い付けてあり、ゴムの入れ替えができない。
・ウエストがゴムのズボンで外出時に着られるものがない。
・大きめ(太め)の人が多いが、大きめサイズの展開が少ない。
・股上が浅く、かがんだりハイハイで移動する際にお尻が見えてしまう。
・チノパンでウエストが入れ替え可能ゴムかつストレッチ性が高いものが欲しい。
・男性の前開き機能よりも入れ替えできるゴム仕様の方が良い。
・おしゃれな服は股上が浅い上にスキニータイプのパンツが多くて着せ替えにくい。(特に子供服)
・セレモニー系の洋服で脱ぎ着をさせやすい、車椅子などでも体にピッタリする服が見つからない。
トイレやお風呂など、ズボンなどボトムスは特に脱ぎ着の頻度が非常に高いため、機能性がとても重要になるとのことでした。
機能性/デザイン性を兼ね備えたものが非常に少ない現状もわかりました。
〜現在の解決方法〜
・市販のものを工夫して(しぶしぶ)使っている。
・家にいる時はサスペンダーで吊っている。
・近所の人にお直ししてもらっている。
→入れてもらったゴムが細く、丸まってしまって使いにくかったので、ひらゴムがいい。(丸まりにくいもの)
・諦めて、あるものを着せていた。(本当はなんでもいい、という服は嫌)
二人と話してみて一番強く感じたのは「障がいのある人は人数が少ないし、洋服屋さんが障がいのある人向けに服を作っても数が売れないために商品にするのは難しいだろうから諦めている」ということでした。
二人とも共通して、自分の大切な人に素敵な服を着てほしいという気持ちと、それを諦めなくてはならない悔しい気持ちが伝わってくる口調で話してくれました。
二人は親としての立場でしたが、障がい当事者の方々は同じかそれ以上に「好きな服を着たい」「でも少数である自分達の要望は聞いてもらえないだろう」と悩んでいらっしゃるだろうというのは容易に想像できます。
インターネットで状況を調べてみました。
厚生労働省障害福祉課の資料によると、障がいのある人の総数は964.7万人で人口の約7.6%にあたります。(内訳:身体障がい者 436.0万人、知的障がい者 109.4万人、精神障がい者 419.3万人)
参考:令和4年3月28日 厚生労働省障害福祉課 第25回「障害福祉サービス等報酬改定検討チーム」資料「障害福祉分野の最近の動向」
(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000918838.pdf)
ファッションについても情報がないか調べを進めたところ、いくつかの調査結果を見つけました。
A.「障がい者のファッションに関する調査」Co-CoLife調査部(※1)
URL: https://research.co-co.ne.jp/2019/12/24/fashion/
公開日:2019年12月27日
調査期間:2019年10月
有効回答数:197件
対象者:全国の『Co-Co Life☆女子部』読者サポーター
※20代〜30代が5割、女性8割、身体障がい者が56.8%、ついで発達障がいが6%
調査方法:インターネット調査
B.プレスリリース「障害者のファッションにおける困りごととは?インクルーシブファッションを手掛けるSOLIT(※2)と共同調査」株式会社ゼネラルパートナーズ(※3)
Digital PR Platform(プレスリリース)URL: https://digitalpr.jp/r/57042
ゼネラルパートナーズnoteURL: https://note.com/gp__info/n/ne46fb4e082a3
SOLIT! Webサイトhttps://solit-japan.com/blogs/journal/survey-review
公開日(プレスリリース):2022年3月23日
調査期間:2022年2月25日12:00〜2022年3月4日12:00
有効回答数:111名
対象者:障がい者総合研究所アンケートモニター
※20代以下 9%、30代 19.8%、40代〜50代 58.5%、60代 12.6%、性別記載なし、身体障がい者56.8%、精神障がい者38.7%他
調査方法:インターネット調査
比較のために、障がいの有無を訪ねていないアンケートも調べてみました。
C.「洋服についてのアンケート」あなぶき興産/アルファあなぶきStyle
URL: https://www.anabuki-style.com/contents/enquete/result/31/
調査期間:2021年2月19日~2021年3月14日
有効回答数:440人
対象者:あなぶき興産/アルファあなぶきStyle「くらしのアンケート」から回答した全員
※20代 6.4%、30代 30.5%、40〜50代 51.1%、60代〜 12%
調査方法:インターネット調査
D.プレスリリース「Z世代のファッションに関する意識調査」株式会社SHIBUYA109エンタテイメント
PR TIMES(プレスリリース)URL:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000033586.html
- WEB調査
公開日:2021年9月14日
調査期間:2021年8月
回答者数:205名(男性85名/女性120名)
対象者:SHIBUYA109 lab.独自ネットワーク所属者 年齢:15~24歳
②SHIBUYA109 lab.による定性調査
・グループインタビュー
対象者条件: 大学生 男子3名、女子4名 2G 合計7名
E.「ファッションに関する人々の意識調査 「1カ月の洋服代、平均3,000円未満が最多?」|アパレル業界について知る!」READY TO FASHION MAG
https://www.readytofashion.jp/mag/column/ccc_serch_2017/
調査期間:2017年5月11日(木)~5月15日(月)
サンプル数:1,600名
対象者:18~69歳の男女(T会員)
調査方法:インターネット (Tアンケート)
※2017年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社がTカード会員向けに実施したTアンケートの結果を取り上げているページより。
※情報元は古いため見つかりませんでした。
アンケートを見比べて気づいたこと。
AとEはコロナウイルスが流行する前のため、少し古いと感じる情報ですが引用いたします。
ファッションに使うお金
まず気になったのは、ファッションに使うお金についてです。
月額だったり、年額だったり、アンケート方法が異なるため一概には比べられませんが、月額に合わせてA、BとEを比較しました。
AとBは障がいのある人向けのアンケートです。
月にファッションにかける金額が3,000円以下/未満の人の割合が、Aは38.7%、Bでは実に63.9%にものぼっています。
一方、T会員を対象としたEのアンケートでは、月額3,000円未満または使わないという人は約31%でした。
Bのアンケートでは月額3,000円以上を洋服に使うと思われる人は約36%となりました。
こちらは年額30,000円以上の人で計算していますので、実際はもっと少ないと思われます。
また、アンケートの最大値が年額「50,000円以上」だったため、月額に直すと4,166円以上、ということになります。
Eでは約65%以上が月に3,000円〜50,000円以上を洋服に使っています。
以上のように、障がいのある人向けアンケートと障がいの有無を確認しないアンケートの結果では、服にかける金額が大きく違う事が読み取れます。
なお、Aは細かい結果の金額が読み取れなかったため詳しく確認することはできませんでしたが、20代〜30代の女性が多いため、服に使うお金が多いのではないかと思いました。
洋服を選ぶ時に重視する事
次に、洋服を選ぶ時に重視する事について比較しました。
AやBでは洋服を選ぶ時に重視する事について「価格」「デザイン」「生地や素材」「着脱のしやすさ(着やすさ)」の4項目がどちらも上位になっています。
Bと回答者の年齢層が似ているCでは「自分に似合うかどうか」が第1位、またZ世代を調査したDでは「自分に似合うかどうか(体型や骨格に合わせる)」よりさらに上位に「遊ぶ場所(人、内容)に合わせる」や「前回とコーデが被らないようにする」など、ファッションを楽しんでいる様子が伝わってきます。
AやBでは購入場所(試着のしやすさや移動のしやすさ)や、体の状態に合わせたお直しについての意見が共通してありました。
また、脱ぎ着のしやすさについても具体的にコメントがありました。
アンケートで共通していたのは、実店舗で買う人の割合がインターネットで買う人の割合よりも多かったことです。
DのZ世代アンケートでは、実店舗とネットショップの利用比率については記載がありませんでしたが、実店舗も積極的に活用している様子が伺えました。
まとめ
以上のように友人から聞いた話とアンケートの結果を見比べて気づいたことをまとめます。
・障がいのある人向けの服はなかなか見つけにくい。
・聞くだけだと簡単な機能に思える事でも、なかなか売っていない。(総ゴムのチノパン等)
・障がいのある人の服はまず「着やすい(機能的に着る人に合っている)」というのが基本となる。
・「着やすさ」が確保された上でファッションを楽しみたいという要望を感じる。
・「デザイン」「生地や素材」「着脱のしやすさ(着やすさ)」は高価格になりやすいのではないか。→選べる服の範囲が狭くなりやすいと思われる。
・店頭でもインターネットでも服を選びにくい。(お店の環境、ネット販売では着やすさがわかりにくい)
ファッションを楽しむ前段階の時点でハードルが高いということを強く感じました。
障がいのある人の服に使う金額が少ないという原因は、そもそも買える服が少ない、という事があるのではないかと感じました。
以上のことから、障がいのある人がファッションを楽しむために必要なことを考えてみました。
・低価格で機能性の高い服。
・柔軟にお直ししてくれるサービス(お安め)。
・ネット販売の場合は着用イメージがつきやすい色々なモデルさん(ポーズ)の写真。
次回は「国内」と「国外」ですでに障がいのある方向けに展開されているアパレル会社の事例も踏まえて、引き続き調査を続けていきます。
※1 Co-CoLife調査部は、NPO法人 施無畏(せむい)が発行している障がい当事者の女性向け雑誌「Co-Co Life☆女子部」のサポーターの意見を活用し、ダイバーシティ人材育成や、ユニバーサルデザインの商品開発の知見をホームページ等で提供している機関です。
※2 SOLIT!は「オール・インクルーシブ」な社会の実現を目標に、ファッションを中心として、多様な人も動植物も地球環境も、誰もどれも取り残さない製品作りに取り組んでいる会社です。
※3 株式会社ゼネラルパートナーズは障がい者の総合就職・転職サービスを運営する会社です。調査・研究はゼネラルパートナーズが運営する障がい者総合研究所が行っています。
システム会社に入社後、主にグループ会社向け基盤システム構築・運用・監視業務及び認証取得業務を担当。
出産を機に退職。
その後、結婚式場など飲食店でのサービス職と工場の事務員で仕事復帰。
工場の倒産後に、ノーティカルをはじめ、工場でお世話になった方々に声をかけていただき、通勤&リモートでトリプルワーク中。
高校1年生と中学1年生の母。子供に振り回される日々を送っている。
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