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【融資】経営者保証に関するガイドラインに沿って社長の個人保証を外す方法
投稿日 2022.05.17 最終更新日 2024.08.07
これまで、法人でお金を借りる際には経営者保証を求められることが一般的でした。
ですが、国(中小企業庁・金融庁)は中小企業の活性化のため、経営者保証に依存しない融資を増やしたいと考えています。
経営者保証
経営者保証とは、
中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること(保証債務を負うこと)。企業が倒産して融資の返済ができなくなった場合は、経営者個人が企業に代わって返済することを求められる(保証債務の履行を求められる)。
(中小企業庁HPより)
と説明されています。
簡単に言えば、会社が倒産して借りたお金を返せなくなった場合は、経営者個人が代わって返済することです。
経営者保証の不具合
ですが経営者保証があると、様々な不具合を生じることが目立ってきました。
①経営者保証があるため法人の倒産と同時に経営者自身も自己破産する
②思い切った事業展開や事業展開の妨げ
③事業承継に支障をきたす
などです。
「経営者保証」には、経営への規律付けや資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継を妨げる要因となっているという指摘もある。
(中小企業庁HPより)
事業承継時を円滑に進めたい国の意向
特に、事業承継に関して、承継者が個人保証を嫌がる、または経営者自身が後継者に個人保証を負わせたくないため承継させないなど、承継が進まないケースが増えています。
中小企業の経営者の高齢化が年々進んでおり、2018年の社長の年齢分布は70歳以上が28.1%と、2013年と比べて6.5ポイント上昇しています。
また、経営者の年齢が60歳以上で58.4%と約6割を占めるようになり、問題となっています。
(令和元年度中小企業白書より)
そこで、2013(平成25年)に
これらの課題の解決策として、全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン(以下、「ガイドライン」とする)」を策定(平成25年12月5日公表、平成26年2月1日適用開始)。
事業承継時に経営者保証が後継者候補確保の障害となっていることを踏まえ、金融機関と中小企業者の双方の取組を促すため、政府として「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」(令和元年5月)を実施
(中小企業庁HPより)
と、経営者保証に関するガイドラインを策定させました。
さらには、事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策もまとめています。
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経営者保証に関するガイドラインとは
中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」と位置付けられており、法的な拘束力はないが、関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されている。経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、金融機関にゆだねられる。
(中小企業庁HPより)
とされており、あくまで、中小企業・経営者・金融機関共通の「自主的なルール」とされています。
とは言え、半年に1回のペースで経営者保証ガイドラインの活用実績を金融庁が発表しています。金融機関の管轄省庁である金融庁の意向もありますので、金融機関にとってもまるっきり無視できるものではありません。
https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline.pdf
経営者保証ガイドラインを活用するタイミングは3つあります。
一つは、借りる時。二つ目は、引き継ぐとき。三つ目は返す時です。
三つ目の返す時とは、経営者保証を履行する時、要は法人が倒産するなどして、法人が借りているお金を返せなくなった時の話になります。
ここでは、経営者保証を付けずに借りる時、引き継ぐときの要件を説明します。
経営者保証ガイドラインの3要件
経営者保証を付けずに融資を受ける、引き継ぐには、3つの要件を満たす必要があります。
法人と経営者が明確に区分・分離されている
①資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
法人と経営者との関係の明確な区分・分離として、「法人と経営者の間の資金のやり取りを、きちんと分ける体制を整備して、法人個人の一体性の解消に努めなさい。また、外部専門家(公認会計士・税理士等)に検証を実施してもらって、結果を対象債権者(金融機関)に適切に開示しなさい。」ということです。
法人のみの資産や収益力で返済が可能
②財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
財務基盤の強化として、具体的に期待される財務状況とは、
・業績が堅調で十分な利益(キャシュフロー)を確保しており、内部留保も十分であること
・業績はやや不安定ではあるものの、業業の下振れリスクを勘案しても、内部留保が潤沢で借入金全額の返済が可能と判断し得ること
・内部留保は潤沢とは言えないものの、好業績が続いており、今後も借入金を順調に返済し得るだけの利益(キャシュフロー)を確保する可能性が高いこと。
とされています。
適時適切に財務情報が開示
③金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている
財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性の確保として、具体的な対応とは、
・貸借対照表、損益計算書の提出のみでなく、これら決算書上の各勘定明細(資産・負債明細、売上原価・販管費明細等)の提出
・期中の財務状況を確認するため、年に1回の本決算の報告のみでなく、試算表・資金繰り表等の定期的な報告
とされています。
以上の3要件を満たして、はじめて、
事業者は、
経営者保証なしで融資を受けられる可能性がある
すでに提供している経営者保証を見直すことができる可能性がある
金融機関は、
要件の充足度合いに応じて、経営者保証を求めないことや保証機能の代替手法(停止条件付保証契約※等)の活用を検討
※停止条件付保証契約とは、中小企業が特約条項(定期的な財務情報の提出義務、他の金融機関に対する担保提供の制限など)に違反しない限り保証債務の効力が発生しない旨の契約
の状況になり、金融機関と経営者保証を外す交渉が可能となります。
あくまでも、経営者保証を解除するかどうかの最終的な判断は、金融機関にゆだねられます。
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区分・分離、収益力強化、財務情報の開示
経営者保証ガイドラインで経営者保証を解除するためには、3要件を満たす必要があります。
しっかりと経営をしている会社でしたら、区分・分離は問題なくできているでしょうし、財務情報を開示するための環境も整っていると思います。
この2つはすぐにでもできることですが、残りの収益力の強化だけは、すでに達成している会社とそうでない会社に分けられます。
3要件を満たしている会社であれば、こちら側から金融機関に打診をして、経営者保証を外してもらいましょう。
基本的に金融機関側から持ち掛けてくることはないです。
要件を満たしていなければ一つ一つクリアさせていくことが望ましいです。
経営者保証なく融資を受けることができる会社にするのは、経営者としての一つの目標と考えます。
それは、対外的に信用を得た証しだからです。
経営者保証の有無は事業承継にも大きく関わってきますので、経営者保証を外すことを達成させ、事業を継続できる体制作りをしましょう。
中小企業診断士/ファイナンシャルプランニング技能士2級/全経簿記上級
神戸市出身
中小企業3社(食品製造・アパレル)で約20年間財務経理部門を担当。2017年に中小企業診断士として独立。2020年株式会社ノーティカル設立。
事業計画・資金計画の立案から金融機関折衝や資金調達、計画実行支援を中心に、経営改善や新規事業支援を行う。
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