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【経営】売上拡大と事業縮小、どちらを選ぶべきか?経営改善時の判断ポイントを解説

投稿日 2022.12.13 最終更新日 2025.03.17
経営改善の目的は利益を出すことですが、その方法は大きく分けて二つあります。
一つは、売上を伸ばして利益を増やす。
もう一つは、費用を削減して利益を増やす。
費用を削減する場合、売上原価のように売上に比例して増減する変動費と、売上の変動に関係なく一定額発生する固定費に分かれます。
わかりやすい例でいうと、変動費は仕入や原材料費。
固定費は、正社員の人件費や家賃などです。
通常、まずは変動費を削減することを検討します。
ですが小さな会社の場合は、外部環境の影響で削減が困難なケースが多いでしょう。
価格転嫁が困難である、仕入先への交渉が困難など。
そのため、経営改善計画を策定する際、方向性は以下の二つに分かれます。
売上拡大のメリット・デメリット
まず利益を出すために考えることは、売上を伸ばすことと思います。
売上は、「販売数×販売単価」ですので、どちらかを上げることができれば売り上げは増加します。
売上拡大策のメリット
利益の増加:販売数量の増加に比例して利益も増える
市場シェアの拡大:競争優位性の強化につながる
事業の成長機会:企業の長期的な成長につながる
従業員のモチベーション向上:成長する会社は社員の士気も高まる
売上拡大策のデメリット
売上増加の難しさ:売上を伸ばすのは容易ではない
価格引き上げの難しさ:販売数量を維持したまま価格を上げるのは難しい
マーケティング施策が必要:新規顧客の獲得や市場開拓には投資が必要
売上拡大は多くの企業がまず検討する方法ですが、「そもそも売上を伸ばせるなら経営改善の必要はなかった」と考える経営者も多いのではないでしょうか。
マーケティング施策が求められる場面と言えます。
また、営業活動の見直しも必要です。
経営改善には売上拡大は必須ですが、このように売上を伸ばす取組みは容易ではありません。
事業縮小のメリット・デメリット
売上を伸ばすことは容易でないなかで利益を出すには、収支のバランスをとる必要があります。
すなわち支出の削減。
変動費のコストカットができればベストです。
ですが容易ではないため、検討される支出削減策は固定費の引下げとなるでしょう。
事業縮小策のメリット
損益分岐点の引き下げ:売上が減っても利益が出しやすくなる
固定費削減による経営安定化:無駄なコストを削減できる
キャッシュフローの改善:経営の持続性が向上する
事業縮小策のデメリット
売上減少の影響:規模縮小により売上が下がる
人員削減の難しさ:リストラは従業員の士気に影響を与える
再成長の難しさ:一度縮小した事業を再拡大するのは容易ではない
固定費を下げることができれば、その分必要な利益額が少なくなります。
損益分岐点売上が引き下げられるため、少ない売り上げでも利益が出しやすいということです。
損益分岐点売上については、こちらの記事も参考ください。
<【経営】経営者なら絶対に覚えておかなければならない損益分岐点分析(CVP分析)>
固定費を引き下げる方法は色々とありますが、人員削減、いわゆるリストラもその一つです。
その他にも、家賃などを削減するために借りている規模を縮小する、もっと安い場所に移転することなども効果的です。
当然その他の経費もすべて見直して、無駄を無くすことが求められます。
余剰人員を削減させる、余剰設備を削減させる策は、事業を縮小させることにもつながります。
事業縮小時の注意点
金融機関や税理士が事業縮小を提案しがちな理由
金融機関や税理士は、売上拡大策よりも固定費削減を提案する傾向にあります。
その理由は
- 売上拡大は確実性が低い:外部環境に依存するため、予測が難しい
- 固定費削減は成果が出やすい:短期間で経営の安定化が図れる
- 未来より過去を信頼:不確実な未来より、過去の実績データーを重視しがち
- 支援の範囲が異なる:税理士や金融機関はマーケティング支援が難しい
からと思われます。
楽観的に考えることことよりも、手堅く確実性が求められる職業柄からこその提案と思います。
安易な事業縮小策は危険
事業縮小案が最良かと言えば、そうとは言い切れません。
経営者にとっては大きな決断であり、以下のデメリットを考慮する必要があります。
- 一度縮小すると再成長が難しい
- 事業規模が小さくなることで売上が減り、再成長しないと返済が厳しくなる
- 売上に対する借入金比率が高くなり、新規の融資が難しくなる
- 規模が小さくなると利益を出しにくくなる
一度縮小してから再び事業を拡大することは、なかなか難しいことです。
ですが、収支を合わせて身の丈にあった経営にもなります。
そのため、資金繰りは安定するでしょう。
一方で、事業規模が小さくなるとおのずと稼げる利益額も少なくなりますので、再成長しないと返済は厳しくなるでしょう。
また、金融機関は利益を出しているよりも、事業規模が大きい方が仕入資金や運転資金等の名目でお金を貸しやすくなります。
そのため、売上に対する借入金比率が高まることで追加の融資が難しくなるでしょう。
そのため、事業縮小を検討する際には、縮小後の人員で利益を出せるのか?借入金の返済負担はどの程度になるのか?などをシミュレーションすることが重要です。
売上拡大と事業縮小を選ぶ際のポイント
どちらの戦略もメリット・デメリットがあり、一概にどちらが正解とは言えません。
売上拡大策も事業縮小策も双方にメリットデメリットがあります。
そこで、下記に選ぶ際のポイントをあげます。
売上拡大策のポイント
- 成長市場にいる
- 競争優位性が確立されている
- マーケティング戦略に強みがある
- 抜本的見直しを図れる
- チャレンジ精神がある
事業縮小策のポイント
- 赤字部門が多く、利益率が低い
- 人材不足やリソース不足に直面している
- 競争環境が厳しく、成長が見込めない
- 現状維持が好き
- 現状の経営スタイルでは持続可能性が低い
- チャレンジできる人材不足
経営改善中における売上拡大策の最大のデメリットは「計画通りに進捗するのか?」に尽きます。
売上は相手あってのことであり、外部環境にも左右されます。
そのため、確実とは言い難いでしょう。
一方でこれまでの考えを変え、抜本的に経営を見直し、行動の変容やチャレンジをすることが未来を切り開くことにもなります。
実際事業を見直し、収益力を高め赤字を脱却した会社はたくさんあります。
事業縮小案は手堅い反面、何事の小粒になり、結局はそのまま再浮上することなく小さいままで終わることもあり得ます。
実際の経営改善では、固定費の削減、経費の削減をしつつ、売上を伸ばす策の合わせ技となるでしょう。
経営者の方針とやりきる胆力が重要
結局のところ、どちらの案にせよ、新たなチャレンジをすることが求められるのは間違いありません。
これまでと同じことをしたからダメになったと認識し、そこからチャレンジすることが必要です。
また、経営者の性格や好みにも左右されます。
周りがいくら騒いでも、しょせん他人であり、結局責任を取るのは経営者になります。
そして一番大事なことは、決めたことをやりきることです。
仮説を立て、やってみて、うまくいってもいかなくても考察をする。
そしてまた、新たな仮説を立てチャレンジする。
結局は
- 新たなチャレンジを恐れない
- 計画を立てて実行し、検証する
- 環境の変化に適応しながら試行錯誤を続ける
このサイクルをしっかり回せるかどうかで、結果は変わってきます。

中小企業診断士/ファイナンシャルプランニング技能士2級/全経簿記上級
神戸市出身
中小企業3社(食品製造・アパレル)で約20年間財務経理部門を担当。2017年に中小企業診断士として独立。2020年株式会社ノーティカル設立。
事業計画・資金計画の立案から金融機関折衝や資金調達、計画実行支援を中心に、経営改善や新規事業支援を行う。
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