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【融資】経営者保証とは?中小企業経営者が知っておきたい基礎知識
投稿日 2024.10.30 最終更新日 2024.11.06
中小企業が融資を受ける際、これまでは半ば当たり前のように経営者保証を求められていました。
ですが最近は金融庁も経営者保証に頼らない融資を推進しています。
まずは経営者保証とはどういったものかを理解してから、経営者保証を行うのかどうかの判断をお勧めします。
そこで今回は、経営者保証について解説していきます。
経営者保証とは
経営者保証とは、経営者が会社の借金やローンの返済を保証することです。
特に中小企業では金融機関からお金を借りるときに、何も言わなければ、半ば当然のごとく経営者保証を求められることが多いでしょう。
金融機関が経営者保証を求めるのは、会社がもし経営不振に陥り返済が難しくなったときに、経営者自身の財産で返済をカバーするためのものです。
簡単に言えば、金融機関は貸したお金が返ってこないリスクを減らしたいから。
小さな会社や創業間もない会社は、まだ信用力が十分ではないことが多いため、経営者が自分の財産で保証することで、金融機関も安心してお金を貸すことができるのです。
とは言え、金融機関も個人資産を差し押さえたいということも当然ですが、簡単に逃げないように、あきらめないようにするため、といった経営者に覚悟を問う側面もあります。
しかし、経営者保証にはリスクがあります。
もし会社が経営不振に陥り返済が滞ると、経営者の自宅や貯金などの個人資産が差し押さえられる可能性があり、生活にも大きな影響が出てしまうでしょう。
そのため、最近では経営者保証を不要にするような融資の仕組みやサポートも増えてきています。
資金繰りを考えるときには、経営者保証についてもしっかり理解しておくと良いでしょう。
経営者保証の必要性と役割
経営者保証とは、企業の経営者が自らの個人資産を担保にして、企業の借入金や債務に対して責任を負う仕組みです。
一つ目は、企業側にとって経営者保証は資金調達をスムーズにする手段です。
特に事業がまだ安定していない企業では信用力が十分ではないため、金融機関が融資をためらうことが多いでしょう。
中小企業やできたばかりの会社の場合、企業の財務基盤がまだ十分に安定していないことが多く、融資のリスクが高いと判断されやすくなります。
そこで経営者が個人としての保証を提供することで、金融機関はリスクを減らせるため融資を行うことができ、企業側も必要な資金を得られることとなります。
二つ目に、経営者保証は経営者自身の覚悟を示す手段です。
自らの財産を担保に差し出すことで、金融機関や取引先に対して「企業の成長に対する真剣さ」を具体的に行動として伝える手段と言えます。
金融機関としても経営者保証は、経営者自身の責任感を確保する手段となります。
このように、経営者が個人としても返済責任を負うことで、企業経営に対する真剣な姿勢を示すことができ、金融機関としても「責任を持って事業に取り組む姿勢がある」と評価されます。
経営者保証は企業にとって資金調達を円滑にするための役割があります。
保証の範囲
経営者保証には、保証の範囲によって「根保証」と「特定債務保証」という2つの種類があります。
根保証(ねほしょう)
根保証は、一定の期間内で発生する複数の債務に対して、一つの保証契約で包括的に責任を負うタイプの保証です。
根保証の特徴として、企業が金融機関から複数回にわたって借入を行う場合などに使われます。
例えば毎年の運転資金の融資など、期間内に発生したすべての借入に対して保証人が責任を負うことになります。
具体的には、事業を行っている期間の債務を保証するような契約です。
根保証のメリットとして、企業にとって融資の手続きを簡素化できる利点があります。
一方デメリットとして、どれだけの借入が発生するかわからず、債務が増え続けても保証人として責任を負う範囲が広がるため、経営者にとってはリスクが高まることとなります。
極度額が契約時に設けられるので無限に保証するわけではありません。
しかし、法人で事業に使う借入金額のため、個人で簡単に返すことのできない金額とはなるでしょう。
可能であれば、返済できる範囲に抑えることが望ましいですが、資金調達の必要性も考慮しての判断となりますので、実際には難しい判断になると思います。
何も言わなければ金融機関はしれっと根保証で進めますので、よく注意しましょう。
特定債務保証(とくていさいむほしょう)
特定債務保証は、特定の借入や債務に対してのみ保証するタイプの契約です。
特定債務保証は、特定の融資に限って保証するもので、例えば「2024年4月に融資を受けた1,000万円の借入に対する保証」といった具合に、保証する債務が明確に限定されます。
これにより、保証人がどの借入について責任を負うのかがはっきりすることで、経営者が負うリスクを限定し、わかりやすくなるメリットがあります。
保証する債務が決まっているため、予期せぬ債務の増加に対して責任を負わずに済むということです。
デメリットとしては、保証する債務が新たに発生する場合には、その都度新しい保証契約を結ぶ必要があり煩わしいと考える人もいます。
経営者保証のメリット・デメリット
経営者保証のメリット
経営者保証を付けるメリットとして、まず、金融機関からの融資を受けやすくなる点が大きいです。
特に、中小企業や創業間もない企業では、信用力がまだ十分でない場合が多いため、経営者保証を提供することで、金融機関は貸し倒れのリスクが減り、安心して融資を行いやすくなります。
また、経営者が自ら責任を負うことで、金融機関に対して事業に対する本気度を示すことができ、企業の信頼感も高まります。
結果として、必要な資金をより円滑に調達できる可能性が高くなり、事業拡大や運転資金の確保に役立ちます。
他には、信用力を高める効果があることで、信用保証協会の保証料率や貸出金利が低く抑えられたり、返済期間が長くとれる場合があることもメリットです。
経営者保証のデメリット
逆に経営者保証を付けることはデメリットもあります。
何といっても最大のデメリットは、企業が返済困難になった場合、経営者の個人資産が差し押さえられることです。
これは、経営者自身の自宅や貯金が対象となるため、経営者やその家族の生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
簡単に言えば、法人の責任と個人の責任が分けられないこととなり、法人のメリットを無くすことにもつながります。
また、経営者保証を付けることで、万が一の際の責任が経営者個人に重くのしかかるため、精神的な負担が増大することも問題です。
一度経営者保証を付けると保証契約の解除には、金融機関と複雑な手続きや審査が必要となることが多く、手間と時間がかかり簡単には外してくれません。
経営者保証を付けずに借りるためには?経営者保証を外すには?
経営者保証を付けずに融資を受ける、経営者保証を外すには、金融機関に対して会社の信頼性や経営の安定性をしっかりと示すことが大切です。
財務の健全性を示す
まず何といっても、会社の財務状況が安定していることを示すことが重要です。
売上や利益が安定していることや、健全な資金繰りができていることを証明すること。
金融機関を納得させられるのは数字です。
会社の財務や収支状況を透明にすることが役立ちます。
事業計画書をしっかり作成する
融資を受ける際には、しっかりとした事業計画書を示すことも大切です。
事業計画書は融資を受けるためだけでなく、自社の経営にも役立つ資料となります。
金融機関はこの計画書を通じて会社の成長可能性や返済能力を評価し、計画が明確で現実的なものであるほど、経営者保証なしでも融資を受ける可能性が高まるでしょう。
なかなか浸透はしきれてないですが、事業性評価によって融資をするようにとの国の方針もあります。
担保の提供を検討する
経営者保証の代わりに、他の担保を提供することで、融資を受けやすくなることがあります。
特に会社の不動産や有価証券などが担保として使えます。
これにより金融機関はリスクを軽減できるため、経営者保証を求められないようにすることができるでしょう。
公的な支援制度を利用する
最近では、経営者保証を不要とする公的な支援制度も増えています。
日本政策金融公庫や信用保証協会などが提供する特定の融資制度を活用することで、経営者保証なしで資金を調達することが可能です。
まとめ
事業を守る、雇用を守るために難しい決断を迫られるでしょうが(しかも急ぎで)、どこまで経営に対して責任を負うかの線引きを考えておいてもよいでしょう。
昔のように、「経営者たるものすべてを背負わなくてはならない。何が何でも続けることが大事」といった風潮も少しづつ減ってきていると思います。
例えば起業をした際に、
「経営者保証を求められる融資は借りない。自己資金や経営者保証のない資金調達ができる範囲内で経営をする」
といったことも一つでしょう。
個人的には経営者保証が足を引っ張り、思い切ったチャレンジもできず、市場の新陳代謝が促されない要因の一つと考えています。
中小企業診断士/ファイナンシャルプランニング技能士2級/全経簿記上級
神戸市出身
中小企業3社(食品製造・アパレル)で約20年間財務経理部門を担当。2017年に中小企業診断士として独立。2020年株式会社ノーティカル設立。
事業計画・資金計画の立案から金融機関折衝や資金調達、計画実行支援を中心に、経営改善や新規事業支援を行う。
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