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ジャストインタイムの限界とは?中小企業が在庫戦略を見直すべき理由
ジャストインタイムは合理的な生産管理手法ですが、供給不安が続く今は前提条件の見直しが必要です。
中小企業が在庫戦略、欠品リスク、機会損失をどう考えるべきかを解説します。
ジャストインタイムとは何か
ジャストインタイムは、長い間、製造業や流通の現場で合理的な考え方として支持されてきました。
トヨタ生産方式(TPS)の柱の一つであり、「必要なものを、必要な時に、必要な分だけ」つくるという考え方は、ムダを減らし、効率を高める仕組みとして広く知られています。
トヨタも公式に、ジャストインタイムをTPSの中核概念として位置づけています。
実際、この考え方には大きな利点があります。
在庫を持ちすぎなければ、キャッシュフローの負担を抑えやすくなりますし、不良在庫や保管コストも減らせます。
特に中小企業にとって、在庫は資金を寝かせる要因になりやすく、倉庫スペースや管理負担も無視できません。
その意味で、ジャストインタイムが合理的であること自体は、今でも変わらないと思います。
ただし、最近はその前提条件が変わってきたのではないか、と感じる場面が増えています。
なぜ今、在庫戦略の見直しが必要なのか
過去数年を振り返っても、コロナ禍では半導体不足によって自動車業界全体が大きな影響を受け、トヨタ自身も部品供給の逼迫による生産制約に言及していました。
さらに直近では、中東情勢の悪化とホルムズ海峡をめぐる混乱を背景に、ナフサなどの供給不安が日本企業に波及し、カルビーが一部商品のパッケージを白黒化して供給維持を図る動きも報じられています。
つまり、サプライチェーンの不安定さは一時的な例外ではなく、経営判断に織り込むべき前提になりつつあります。
教科書としての考え方が間違っているわけではありません。
問題は、その考え方が成立する条件です。
ジャストインタイムは、本来「必要な時に必要なものが、かなりの確度で届く」ことを前提にしています。
トヨタの公式説明でも、工場には日々、多数のサプライヤーから部品がジャストインタイムで届けられているとされています。
裏を返せば、その仕組みは供給の安定性と、緊密な連携があって初めて成り立つものです。
ところが今は、世界がつながりすぎているがゆえに、どこか一か所の混乱が想像以上に長く尾を引きます。
物流の停滞、エネルギー価格の上昇、原材料不足、地政学リスク。こうした変化が重なると、「必要な時に必要な分だけ届く」という前提そのものが揺らぎます。
そうなると、在庫を持たないことだけを絶対的な正解にするのは危うくなります。
もちろん、だからといって何でも多めに持てばよい、という話でもありません。
在庫にはコストがあります。保管費もかかるし、資金も固定されるし、品質劣化や陳腐化のリスクもあります。
特に中小企業では、在庫負担の重さがそのまま資金繰りの重さにつながります。
だから大切なのは、「在庫を持つか、持たないか」という二択ではなく、何を、どこまで、なぜ持つのかを見直すことです。
たとえば、代替がききにくい部材、欠品すると生産や納品が止まるもの、納期遅れがそのまま機会損失になるものは、従来より少し厚めに持つという判断もあり得ます。
反対に、入手しやすく代替も効き、短期間で補充できるものは、引き続き在庫を絞る方が合理的かもしれません。
重要なのは、すべてを一律に「在庫=悪」とみなさないことです。
中小企業が抱える在庫リスクと欠品リスク
中小企業の現場では、欠品による影響は想像以上に大きいことがあります。
一時的に供給できないだけで済めばまだよいのですが、他社がその間に供給を続ければ、取引先や市場シェアを奪われる可能性もあります。
つまり、在庫はコストですが、欠品もまたコストです。
しかもそのコストは、目に見える保管費より把握しにくく、気づいた時には売上機会や信頼の損失として表れます。
在庫は悪なのか?機会損失とのバランス
今の環境で見直したいのは、ジャストインタイムそのものではなく、ジャストインタイムを支えてきた前提です。
「いつでも届く」「予定通り入る」「代わりはすぐ見つかる」
こうした条件の確実性が下がっているなら、在庫戦略もアップデートが必要です。
教科書通りが悪いのではありません。
むしろ、教科書通りが機能する背景を理解し、自社の現場に当てはめ直すことが大切です。
これからの在庫管理では、効率だけでなく、供給継続性や機会損失の回避まで含めて考える視点が欠かせません。
ジャストインタイムは、今でも優れた考え方です。
ただし、前提が変われば、運用も変わるべきです。
中小企業にとって必要なのは、過去の正解をそのまま守ることではなく、変化した環境の中で「自社にとっての適正在庫」を見極めることではないでしょうか。

中小企業診断士/ファイナンシャルプランニング技能士2級/全経簿記上級
神戸市出身
中小企業3社(食品製造・アパレル)で約20年間財務経理部門を担当。2017年に中小企業診断士として独立。2020年株式会社ノーティカル設立。
事業計画・資金計画の立案から金融機関折衝や資金調達、計画実行支援を中心に、経営改善や新規事業支援を行う。
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