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【経営】「インクルーシブデザイン」とは何か。体験会へ参加し、本を読んで考えた。
投稿日 2022.12.27 最終更新日 2024.10.28
仕事で障がい者を取り巻く環境について、私スタッフSiが調べる機会がありました。
調べていく中で頻繁に目にしたのが「インクルーシブデザイン」という単語です。
また、上司からもNIKKEI DESIGN10月号にインクルーシブデザインについての特集が掲載されていると教えてもらい、記事を読みました。
最初、私はインクルーシブデザインとはユニバーサルデザインのような、障がい者も高齢者も使えるデザインという認識でした。
そんな認識の中、NIKKEI DESIGNに寄稿されていた株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ様(以下IDS)が、インクルーシブデザイン・ワークショップの体験会を開催されていることを知り、ほとんど何もわからないまま参加してきました。
今回はその体験会と、帰宅してから読んだIDS社長井坂氏の著書「SDGs時代の課題解決法 インクルーシブデザイン」から学んだことをレポートさせていただきます。
【株式会社インクルーシブデザイン・ソリューションズ様(IDS)ホームページ】
【「SDGs時代の課題解決法 インクルーシブデザイン」井坂智博,日経BP,2019/12】
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初めに、インクルーシブデザインとは
インクルーシブデザインとは、英国発祥のデザイン手法のことです。
ロジャー・コールマン教授(王立芸術大学院名誉教授、デザイナー)が提唱し、ケンブリッジ大学が体系化したデザイン手法です。
「インクルーシブデザインとは、高齢者、障がい者、外国人など、従来、デザインプロセスから除外されてきた多様な人々を、デザインプロセスの上流から巻き込むデザイン手法です。」
一見、ユニバーサルデザインやバリアフリーも同じではないかと思われるかと思います。
私もそう思っていました。
ユニバーサルデザインは、一般的に健常者のデザイナーが、障がい者、高齢者、外国人などにどんな不便があるかを想像して作られてきたデザインと言われています。
作る過程で意見を聞くことはあっても、デザインの主体はあくまでデザイナーです。
バリアフリーは、目に見える物質的・精神的な障害、障壁を取り除くことです。
ユニバーサルデザインやバリアフリーは、不便を解消したり、障害・障壁を取り除いたりすることが目的のデザインです。
「してあげる」のが目的といえるデザインと言っても良いかもしれません。
一方、インクルーシブデザインは、障がい者、高齢者、外国人などこれまで排除されてきたユーザーと初めから一緒に企画・デザインしていく手法となります。
「一緒に考え作る」デザインであると考えます。
インクルーシブデザインは、一部のユーザーの排除の背後には必ず社会課題があると考え、その社会課題を解決することがイノベーションを起こすという考えのもと編み出された手法であり、解消や取り除くことが目的ではなく、さらにその一歩先のサービスや商品を生み出すための手法なのです。
インクルーシブデザイン・ワークショップ体験会で感じたこと、驚いたこと
IDSは、英国のインクルーシブデザインの手法に加え、スタンフォード大学のデザイン思考を組み合わせて構成されたワークショップを開催しています。
体験会の時間は短いものの、本番のワークショップと同じ流れで開催されているようで、盛りだくさんな内容でした。
グループに分かれて活動しますが、私のグループでは車椅子の方が「リードユーザー」としてグループを引っ張ってくださいました。
「リードユーザー」はIDSでは「障害を持ち日常生活に不便を感じながらも、その解消のために創意工夫をしているアクティブユーザーのこと」と定義されています。
IDSではリードユーザーの育成も行っているとのことです。
車椅子を利用している、視覚障害を持っている方が向き合っている社会課題は、現在の課題でありながら、超高齢化社会を迎える日本の未来において多くの人か感じる社会課題になり得るとも言えます。
未来を先取り(リード)して社会課題に向き合っていることから「リードユーザー」と呼んでいると伺いました。
体験会では、最初の講義で「リードユーザーへの質問は固定概念を捨ててすること」とアドバイスがありました。
しかし、いざフィールドワークが始まってみると、私はリードユーザーへ質問する際、何度も「○○は不便ですよね?」という聞き方をしてしまいます。
自分自身の固定概念の強さに驚きました。
私が不便だ(不快だ)と想像した事でも、リードユーザーに聞いてみると特に不快なことではない、という事がいくつかあったのも驚きでした。
一緒に街を歩くだけで、いつもとは違う物の見え方がし、多様性の大切さを痛感しました。
今回は車椅子のリードユーザーでしたが、視覚障がい者、外国人、高齢者と同じ目線で動くことでそれぞれ見え方が違うだろうということが想像でき、とても良い気付きを得ることができました。
インクルーシブデザインの進め方
体験会で学んだこと、またその後にIDS社長の井坂氏の著書「インクルーシブデザイン」を読んで学んだことをまとめてみました。
インクルーシブデザインの手法がイノベーションを起こす理由のひとつには、障がい者(リードユーザー)と一緒に行動し観察することにより、今までの自分の固定概念を壊した発想ができるということが挙げられます。
また、前章でも触れたように、車椅子ユーザーや視覚障害者の困りごとは、そのまま高齢者や日本語が読めない外国人の困りごとにも当てはまります。
超高齢者社会を迎える日本では、近い将来、一部の障がい者だけの困り事ではなく社会全体の困りごと=社会課題になる可能性を持った事と捉えられます。
一方、健常者が困りごとだと思ったことが、実は当事者にとってはそれほど困ることではないということもたくさんあります。
健常者が不便だと思うことが必ずしも障がい者のニーズではない、ということです。
気づいた不便や困りごとをそのまま解決した商品・サービスを作っても、それはその対象者だけの課題の解決方法というだけに留まり、小さな市場しか獲得できません。
インクルーシブデザインでは、リードユーザーとの行動・観察により、その困り事を自分ごととして見て、特定の人の困りごとではなく抽象化して多様な人の困りごと(社会課題)とし、そこにユーザーから見た自社の強みを活かしてどう解決するかという問いを作る事(問題定義)を勧めています。
特定の人向けの小さな市場から、社会課題という一般の大きなマーケット向けになる、ということです。
それには、不便やニーズをそのまま解決するのではなく、その裏にどのような社会問題があるのかをしっかりと考え、それに対する問題定義が必要と言われています。
その流れが、新たな価値を持つ問題解決方法が見つかる(イノベーションを起こす)ことに繋がっていくのです。
最後に、インクルーシブデザインの事例を紹介します。
セブン銀行のATMの最新型は、視覚障害者の方と一緒に開発されたそうです。
結果、わかりやすい音声操作をはじめ、使いやすいデザインとなったことが大きく貢献し、現在様々な施設で導入されているそうです。
他には、花王のアタックZEROワンハンドタイプがあります。
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これは、視覚障がい者や手に軽度のまひがある方、シニアなどの協力を得て開発されたそうです。
このように開発された商品は、便利ということで健常者からも好評のようです
まとめ
体験会や本で学んだことをまとめて書いてみましたが、私自身がまだまだ消化不良なところがあります。
繰り返し機会を作ってインクルーシブデザインに触れることで理解が深まると感じております。
自分自身の固定概念の強さが浮き彫りになったこと、そして、リードユーザーの考えが私の考えでは思いもつかない事であるという体験はとても新鮮で楽しいものでした。
気になった方は、IDSのインクルーシブデザイン・ワークショップ体験会に出席したり、本を手に取って読んだりしていただくことをお勧めします。
システム会社に入社後、主にグループ会社向け基盤システム構築・運用・監視業務及び認証取得業務を担当。
出産を機に退職。
その後、結婚式場など飲食店でのサービス職と工場の事務員で仕事復帰。
工場の倒産後に、ノーティカルをはじめ、工場でお世話になった方々に声をかけていただき、通勤&リモートでトリプルワーク中。
高校1年生と中学1年生の母。子供に振り回される日々を送っている。
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