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【資金繰り】節税って、本当に得なの? ― 税理士が教えてくれた“2つの落とし穴”

【資金繰り】節税って、本当に得なの?  ― 税理士が教えてくれた“2つの落とし穴”

投稿日 2021.12.16 最終更新日 2025.04.16

 

「節税って、何かいい方法ある?」 経営者の方と話していると、よく聞かれる質問です。

私自身も、ちょっと多めの利益が出そうなタイミングで、友人の税理士に同じことを聞いたことがあります。

そんなとき、必ず返ってくるのがこの言葉。

「結局、節税って“余分にお金を使う”か“支払いを遅らせる”かの2択やで」

シンプルだけど、本質を突いた答えです。

2025.4大幅加筆修正

 

経営・資金繰り改善

その「節税」、本当に意味がありますか?

今回は、この「2択」が具体的にどういうことなのか、そして“節税”とどう付き合えば良いのかを、できるだけやさしく、解説してみたいと思います。

税金の話がちょっと苦手だと感じる方にも読んでもらえるように、専門用語はできるだけ噛み砕いています。

「なんとなく不安」「難しそう」と感じている経営者の方こそ、ぜひ読んでみてください。

 

1. 税金の基本構造をざっくり理解する

「税金」と聞くと、なんだか難しそうに感じるかもしれません。

でも、まずはシンプルなイメージを持つだけでも十分です。

基本は、

売上 − 経費 = 利益(=もうけ)

この利益に税率がかかって、税金が決まる。

 

つまり、「たくさんもうけたら、そのぶん税金も増える」という仕組みです。

ここさえ押さえておけば、細かいルールを知らなくてもOK。 まずは全体像をなんとなくつかんでおきましょう。

税金は、大きく分けて「個人」と「法人」でかかり方が違います。

 

■ 個人事業主にかかる主な税金

ここでは、個人で商売や事業をしている方(個人事業主)が払う主な税金を、できるだけやさしく説明します。

  • 所得税:一年間にどれくらいもうけたか(利益)によって決まる税金で、国に払います。もうけが大きくなるほど、税率も高くなります。
  • 住民税:住んでいる地域(県や市)に払う税金で、だいたい利益の10%くらいです。
  • 個人事業税:ある程度もうけが出ている場合にかかる税金で、業種によって違いますが、3〜5%くらいです(年間290万円以下の利益なら、かからないこともあります)。

こうした税金は、「利益=売上から経費を引いた金額」に対してかかるものです。

 

たとえば、「ふるさと納税」や「生命保険の支払い」などをうまく使うと、計算上の“もうけ”が少なくなる仕組みがあります。

その結果、税金の金額も減ることになるんですね。

「こうした制度を使えば、税金を払うもとになる数字をちょっと減らせる」くらいに思っておけばOKです。

 

■ 法人にかかる主な税金

ここからは、法人(会社)としてかかる税金の話です。個人事業主とは少し違った税金が出てきますが、できるだけシンプルにお伝えします。

  • 法人税:会社の利益に対してかかる税金で、国に納めます。だいたい15〜23%くらいの幅があります。
  • 法人住民税:会社がある地域(県や市)に納める税金で、おおよそ10%くらいです。
  • 法人事業税:これも利益に応じてかかります。地域や利益の大きさによって3〜7%ほど。
  • 均等割:たとえ赤字でも、最低限かかる税金。いわば「会社を持っているだけで発生する維持費」のようなものです。

法人になると、「赤字でもかかる税金がある」「役員報酬の決め方次第で税金が変わる」など、少し仕組みが複雑になります。

でも、裏を返せば“うまく設計すれば調整できる余地がある”とも言えます。

まずは、「そういう違いがあるんだな」くらいに思ってもらえたら十分です。

 

法人の場合は「赤字でも税金がかかる」「役員報酬や社会保険も含めて全体設計が必要」など、少し複雑になります。

ここも「税金がかかる=利益が出ている証拠」として前向きに捉える視点が大切です。

さらに、小さな会社の経営者の場合、「会社にかかる税金」と「代表者個人にかかる税金」の両方を意識しておく必要があります。

法人税や法人住民税など会社として支払う税金に加え、役員報酬や配当に対する所得税や住民税など、個人側の負担もあります。

事業と生活が密接につながっているからこそ、法人と個人のバランスを意識した資金管理や節税の視点が欠かせません。

2. そして節税は2つに分かれる

節税策は、大きく分けて2つの考え方に整理できます。

※とくに小さな会社の経営者にとっては、「会社の節税」と「個人の節税」が重なって存在しています。

事業の利益をどう残すかだけでなく、役員報酬や個人の所得税・住民税まで含めて、“全体でお金をどう回すか”という視点が欠かせません。

 

① 実際にお金を使って利益を減らす方法

たとえば、業務に使うパソコンを買い替える、研修費を払って社員を育てる、広告を出して販路を広げるなど、”今期中に事業に必要な支出を行う”ことで利益を圧縮するやり方です。

これらの支出は、税務上「経費」として認められるため、その分課税対象となる利益が減り、納税額も下がります。

ただし、“節税のためだけに”無理にお金を使ってしまうと、手元の資金が減ってしまい、資金繰りが悪化するリスクもあるため注意が必要です。

 

② 納税のタイミングを将来にずらす方法

たとえば、保険に加入したり、小規模企業共済に掛金を払ったりして、今期の利益を一時的に減らすことで、納税額を減らす方法です。

こうした方法は「今は経費のように見えるけれど、将来は利益として戻ってくる」ことが前提になります。

つまり、“一時的に税金を少なくして、あとで払う”という考え方です。

お金が戻ってくるタイミングで税金が発生するので、「いつ・いくら戻ってくるのか」や「そのときの資金繰りは大丈夫か」なども見据えておくことが大切です。

3. よくある“節税のつもり”で陥る罠

節税を考えるとき、注意しておきたいのが「知らないうちにグレーゾーンに踏み込んでしまうこと」。

 

3-1. 売上をごまかして下げる

「ちょっとだけなら…」と売上を抜いて申告するのは、立派な脱税です。
とくに現金商売では「記帳しなければバレない」と考えがちですが、税務署は仕入れとの整合性や粗利率を見ています。

 

3-2. 経費を水増しする

支払っていない経費を帳簿に計上するのも、当然NGです。
領収書の“後づけ”や、私的な支出を経費として処理するのもトラブルのもとになります。

 

3-3. 在庫を少なく見せる

在庫がある業種で、「期末棚卸の金額を少なめに出す」というのも脱税につながります。
売上原価が増えて利益が減るため、一見“節税”できたように見えますが、これは明確な不正です。

※在庫評価方法には6種類ありますが、ここでは詳しく触れず、「ちゃんとルールに沿った処理をすること」が大切、とだけ押さえておきましょう。

4. 節税するなら“未来に効くお金の使い方”を

節税目的の支出をするなら、それが「未来につながる投資」になっているかを意識しましょう。

たとえば…

  • パソコンの入れ替え(業務効率UP)
  • 社員研修・外部セミナー(人材投資)
  • 広告・販促活動(売上増加の布石)

また、小規模企業共済のように「将来への備え」として機能する制度もあります。

※小規模事業者のみ加入可能

これは退職金の積み立てのようなもので、全額が所得控除の対象。安心感もあり、実質的な節税効果も高めです。

5. 社会保険の負担にも目を向ける

意外と見落とされがちなのが、“社会保険料の重さ”です。

たとえば個人事業主の場合、利益が増えると国民健康保険料も上がっていきます。

中には「住んでいる自治体によっては、税金よりも保険料の方が高く感じる」なんて声もあるほどです。

 

だからこそ、「法人化」を検討するタイミングでは、“社会保険を含めたトータル負担”を考える視点が大切になります。

目安としては、「年間利益が500万円を超えてからボチボチ検討」がひとつの判断基準。

加えて、法人にすると

  • 取引先からの信頼が上がる
  • 融資の選択肢が広がる
  • 代表者保証なしの融資も可能になる

といった“信用”面の効果も見逃せません。

おわりに|節税に振り回されるより、事業を育てる

税金の話になると、つい「どうやって減らすか」「損しない方法はないか」と考えてしまう方が多いと思います。

特に、お金のことがあまり得意じゃない経営者にとっては、「税金って難しい」「なんとなく不安」と感じやすいテーマかもしれません。

でも実は、難しく考えすぎなくても大丈夫です。

大事なのは、「事業を続けていくために、今あるお金をどう使うか?」という視点を持つこと。

税金を払うというのは、ちゃんと利益が出た証拠。

無理に減らすことばかり考えるのではなく、これからの会社に必要なものにお金を回せるようにしていく。

その中で、結果的に節税につながる選択肢を活かしていく。

それが一番、地に足のついた考え方ではないでしょうか。

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