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【会計】小さな会社の経営者向け会計講座|貸借対照表の読み方
投稿日 2023.06.20 最終更新日 2024.10.28
会計、簿記でつまづく原因の一つが、貸借対照表の存在です。
損益計算書はお金から使ったお金を引いて表記されていますので、家計簿にも似ていて直感的に理解もしやすいと思います。
一方で貸借対照表は、右と左に別れているので難しく感じるかもしれません。
今回は貸借対照表の読み方、使い方を解説していきます。
前回までの記事はこちら
貸借対照表の読み方
貸借対照表の表基準にも理由がある
損益計算書にも表記するルールがあったのように、貸借対照表も順番のルールがあります。
貸借対照表は左側(借方)に資産、右側(貸方)に負債と資本を記入します。
「資産 = 負債 + 資本」となりますので、貸借対照表の右側の合計と左側の合計は必ず同じ金額になります。
理解すると貸借対照表の使い方がグッとわかりますので、まずはこのルールをまず覚えましょう。
資産の部
左側(借方)に記載される資産の部は、上から「現金化しやすい順番」に原則記載します。
そのため、現金を最も一番初めに書き、その後預金や受取手形、売掛金、有価証券、商品(在庫)・・・と続いていきます。
①流動資産
流動資産とは、企業が所有していて、1年以内に現金に変えられると見込まれる資産のことです。
企業がその運営資金として使うことができるか、または必要に応じて現金に換えることができる資産で、その流動性から「流動資産」と呼ばれます。
流動資産の多寡は企業の財務健全性を判断するための重要な指標です。
主には、下記のようなものがあります。
現金: 手元にある現金や銀行口座の預金を指します。
売掛金: 既に商品やサービスを提供したものの、まだお金を受け取っていない場合のお金を指します。例えば、あなたが商品を売って顧客からの支払いを待っている場合、その顧客から受け取るべきお金は売掛金となります。
在庫: 販売のための商品や原材料など、会社が保有している物品のことを指します。
前払金: 商品やサービスを受ける前に支払ったお金を指します。例えば、保険料を1年分前払いした場合、サービスを受ける期間がまだ残っている分の金額は前払金となります。
②固定資産
固定資産とは、企業が長期的な運用や生産活動のために所有し、基本的に1年以上使い続けることができる資産のことです。
これらは通常、短期間で売却することを意図していない資産ため、流動資産と分けます。
主には、下記のようなものがあります。
有形固定資産: これは物理的な形を持つ資産を指し、土地、建物、機械、設備、車両などが含まれます。
無形固定資産: これは物理的な形を持たない資産で、特許権、商標権、著作権、ソフトウェアなどが該当します。
投資その他の固定資産: これには長期的な投資や長期間にわたり利益を生むための資産が含まれます。例えば、他社への出資や長期の貸付金などがあります。
③繰延資産
繰延資産とは、企業が将来の期間にわたって利益を得るための支出をしたものの、その全額を現在の期間で経費として認識しきれない場合に計上される項目です。
少しわかりにくいのですが、会計は発生主義(発生した時に計上)するというルールがあります。
費用として全額支払ったものの、来年以降にもその効果が発生する費用を一旦長期前払費用などに計上して、その年度に費用(損益計算書に記載)して減らしていくものです。
またさらにややこしいのが、税法と会計基準の違いから生じる課税所得と会計利益の差異を反映したもので、「繰延税金資産」と呼ばれるものがあります。
企業が将来の期間において税金の負担を軽減できる場合、それは繰延税金資産として計上されます。
負債の部
④流動負債
流動負債とは、企業が1年以内に返済する必要がある負債(借り入れや債務)のことです。
企業が近い将来に負う負担を示しており、流動負債が多い場合、近い将来支払うお金が多いことを示します。
流動負債の管理は流動資産の管理と同じくらい、企業の健全な経営にとって重要です。
主には、下記のようなものがあります。
買掛金・未払金: 企業が受けたサービスや商品の代金をまだ支払っていない場合、その未払い金額が未払金となります。販売目的で購入した商品や原材料の場合は買掛金、それ以外は未払金とすることが一般的です。これは電気料金やレンタル料、サプライヤーへの支払いなど、さまざまなものに関連する可能性があります。
借入金: 企業が1年以内に返済する必要がある借り入れ金額を指します。
前受金: 企業が商品やサービスを提供する前に顧客から受け取ったお金を指します。例えば、年間契約のサービスに対して顧客から1年分の料金を前払いで受け取った場合、サービスを提供する期間がまだ残っている分の金額は前受金となります。
⑤固定負債
固定負債とは、企業が1年以上の期間で返済する必要がある負債のことです。
業の長期的な負担を示しています。固定負債が大きいということは、その企業が長期的に返済の責任を負っているということを意味します。
主には、下記のようなものがあります。
長期借入金: これは企業が長期間(1年以上)で返済する必要がある借入金です。こ
リース債務: これは企業がリース契約を通じて取得した資産の使用権に対する債務です。リース期間が1年以上の場合、リース料金の未払い分は固定負債として計上されます。長期未払費用として計上されている会社も多いです。
退職給付債務: これは企業が退職する従業員に対して支払う必要がある退職給付に対する債務です。退職給付は従業員が企業に長期間勤務した結果として発生するため、これは一般的に固定負債として計上されます。法人税では損金として認められていないので計上されていないことも多いかもしれません。ですが退職金規定がある場合は、記載されていなくても簿外負債として存在することとなります。
純資産(資本)の部
私が簿記を勉強していたころは資本の部と呼ばれていましたが、2006年に純資産と表記が変更されました。
純資産とは、企業の資産から全ての負債を引いた後に残る価値のことで、簡単に言うと返済義務が無い資産と言えます。
企業が自己の力でどれだけの価値を保有しているかを示す指標となり、企業の財務健全性や持続可能性を評価する際に重要な役割を果たします。
純資産が多いということは、企業が利益を上げた蓄積の歴史であり、企業の成長性や財務的な強さを示しています。
純資産は以下の要素から構成されます。
資本金: 企業が設立時や増資時に株主から受け取ったお金のことを指します。
利益剰余金: これは企業が過去に稼いだ利益のうち、配当として株主に支払われずに企業内に留められた部分です。
評価・換算差額等: これは金融商品の評価や為替換算によって生じる価値の変動や、債務の値下げや債務免除によって生じる利益を含みます。
さいごに
貸借対照表はある時点を切り取った会社の「財務状況の写真」と言えます。
資産(会社が持っているもの)、負債(会社が支払うべきもの)、純資産(資産から負債を引いた会社の純価値)を一覧できます。
これを理解することで、会社の財務状態、借入れの適正さ、将来的な投資や費用対策を考える上での重要な基礎を把握できます。
会社の健康状態をより正確に判断するためには、損益計算書だけでなく貸借対照表の理解がとても重要となります。
中小企業診断士/ファイナンシャルプランニング技能士2級/全経簿記上級
神戸市出身
中小企業3社(食品製造・アパレル)で約20年間財務経理部門を担当。2017年に中小企業診断士として独立。2020年株式会社ノーティカル設立。
事業計画・資金計画の立案から金融機関折衝や資金調達、計画実行支援を中心に、経営改善や新規事業支援を行う。
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