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【補助金】小規模事業者持続化補助金の経営計画書兼補助事業計画書は審査項目を漏らさず書く
投稿日 2022.04.07 最終更新日 2022.10.18
どの補助事業計画書も同じですが、審査項目を漏らさず書くことが採択への近道です。
小規模事業者持続化補助金は補助額こそ小さいですが、採択されるハードルは他の補助金に比べても低く、活用しやすい補助金です。
事業再構築補助金やものづくり補助金は、その多くが外部のコンサルタント等が計画書を書いています。
それらに比べると、小規模事業者持続化補助金は経営者本人が自力で計画書を書いても、十分採択される可能性があります。
また、公募要領の重要説明事項の1番最初には、
本補助金事業は、小規模事業者自らが自社の経営を見つめ直し、経営計画を作成した上で行う販路開拓の取組を支援するものです。外部のアドバイスを受けること自体は問題ありませんが、事業者自らが検討しているような記載が見られない場合、本補助金の趣旨に沿わない提案と捉えられ、評価に関わらず採択の対象とならないことがありますのでご注意ください。
とあり、外部のコンサルに丸投げして計画を作成してはいけませんと、ご丁寧に注意されてます。
本来の趣旨に添い、「小規模事業者自らが自社の経営を見つめ直し、経営計画を作成」しましょう。
と言っても、経営計画書を作成したことのない人にとってはなかなかハードルが高いものです。また、単に経営計画書を作成するのではなく、補助金が採択されるように補助事業計画書を作成しなければなりません。
そこで、補助金に採択されるためのポイントを押さえていきたいと思います。
※令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金<一般型>公募要領 第2版2022年3月29日 をもとに執筆しています
https://r3.jizokukahojokin.info/
ご注意
当社の記事は予測や個人的見解を含みます。
当社の記事に基づいて全てを判断せず、募集要領は必ずご自身でお読みになり確認してください。
また、採択されなかった場合でも当事務所では一切の責任を負うことはできません。
当事務所の記事に記載されている情報や見解は、予告なしに変更することがあります。
事業概要の内容に即した取り組みであることが大前提
1ページ目の一番初めに、小規模事業者持続化補助金の事業概要が書かれています。
小規模事業者等が今後複数年にわたり相次いで直面する制度変更等に対応するために取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助することにより、地域の雇用や産業を支える小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的とします。本補助金事業は、持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組や、その取組と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援するため、それに要する経費の一部を補助するものです。
長々と小さい字で書かれていますが、
・制度変更等に対応するために取り組む販路開拓等の取組の経費の一部を補助
・小規模事業者等の生産性向上と持続的発展を図ることを目的
・持続的な経営に向けた経営計画に基づく、地道な販路開拓等の取組
・その取組と併せて行う業務効率化(生産性向上)の取組を支援
と、大事なことが4つ書かれています。
なので、経営計画書を作成するには上記4つの事でなければいけません。
ちなみに「制度変更等に対応するため」となっているのは、インボイス制度に対応するためと言い換えてもいいと思います。そのため、今回からは「インボイス枠」が設定されています。
基本的には「販路開拓等の取組」「販路開拓等の取組+業務効率化(生産性向上)の取組」で計画策定すれば良いでしょう。
審査基準は募集要項に書かれている7.採択審査が全て
公募要領7.採択審査に、審査の観点がまとめられています。
Ⅰ.基礎審査の注意点
基礎審査は、必ず満たさないといけないものです。
次の要件を全て満たすものであること。要件を満たさない場合には、その提案は失格とし、その後の審査を行いません。
①必要な提出資料がすべて提出されていること
②「2.補助対象者」(P.5)・「3.補助対象事業」(P.6) ・「4.補助率等」(P.7)の要件に合致すること
③補助事業を遂行するために必要な能力を有すること
④小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること
と4つすべてを満たす必要があります。
“①必要な提出資料がすべて提出されていること“と”②「2.補助対象者」(P.5)・「3.補助対象事業」(P.6) ・「4.補助率等」(P.7)の要件に合致すること“は要項をよく読み、自身が補助対象者であること、補助対象事業であること、類型の枠の要件に合致していることが必須で、事前に十分確認をしましょう。
わからなければ、管轄の商工会・商工会議所でアドバイスをもらいましょう。
補助対象事業には、“(2)商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること”と明記されています。
“③補助事業を遂行するために必要な能力を有すること”とは、「ヒト・モノ・カネ・ノウハウ」が備わっているかが問われています。
これは計画書が絵に描いた餅にならず、取り組みができるかどうかの確認です。
採点評価実施者から見て「小規模事業者がホントにできるのか?」と疑いをもたれない取組を書きなさいという事です。
そのための説明をしっかり書いてくださいと言う事が読み取れます。
項目別に、補助事業を遂行しても問題が無いことを記載しましょう。
“④小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること”は、“様式2<経営計画書>3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み”の欄に記載した技術やノウハウの強みを、補助事業で取組むために活用する旨を記載しておきましょう。
「小規模事業者が主体的に活動し」の部分は、他人任せではダメですよと読み取れます。
「その技術やノウハウ等を基にした取組であること」の部分は、何かしらのこれまでの蓄積されたものを活かして計画しなさいという事です。全くの新分野では成功の可能性が低いとみなしますよという事なのでしょうか。
Ⅱ.書面審査の注意点
ここからが審査の本番です。
①自社の経営状況分析の妥当性
○自社の経営状況を適切に把握し、自社の製品・サービスや自社の強みも適切に把握しているか。
自社の事をどれだけしっかりつかめているのか、それが見当違いでないのかを判断されます。
わざわざ、「自社の製品・サービス」「自社の強み」と分けて書いてくれていますので、少なくともこの二つの事はしっかりと書きましょう。
“様式2<経営計画書>3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み”を書く欄に書きましょう。
「強み」と書かれていますが、「商圏内の競合他社と比べて優れていること」を書きましょう。
また、思い込みでなく、「なぜ強みと言えるのか」を客観的に記載することを意識すると良いです。
全く自社の事を知らない相手に文章だけで伝える必要があるので、きちんと根拠(数値や具体的な記載)を示す必要があります。
②経営方針・目標と今後のプランの適切性
○経営方針・目標と今後のプランは、自社の強みを踏まえているか。
自社の強みが経営方針・目標と今後のプランにしっかり反映されているかをチェックされます。
裏を返せば、強みを活かしていない経営方針・目標は成功しないから補助金は出しませんという事です。
○経営方針・目標と今後のプランは、対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。
「対象とする市場(商圏)の特性を踏まえているか。」となっています。
対象とする市場(商圏)の説明が求められています。採点者は対象となる市場特性を知っている人ばかりではないので、教えてくださいという事です。
そして、その市場特性を踏まえて、自社の強みが発揮できるものなのかを伝えなければなりません。
上記で書いた強みを活かした今後のプランにする必要があります。
中小企業の基本的戦略は、強みを活かすことがセオリーであるとの中小企業庁の考えに沿ってます。
次に、単に強みを活かせば良いのではなく、市場(商圏)の特性を踏まえる必要があります。
小規模事業者は、ニッチなニーズに柔軟に対応することが良いとの考えです。
そのため、市場(商圏)特有の事情を踏まえたプランが求められています。
また、いくら強みを活かせても、その市場に留まっていては力が発揮できないのであれば、新たな市場に打って出る必要がある、と暗に示唆しています。
さらには、市場があり、強みも活かせるが、現状他社に比べて負けているのであれば、強みをもっと訴求して集客しなさい、とこれも暗に示唆しています。
この新たな市場に打って出て販路開拓する、取り込めていない顧客に訴求して新たに販路を開拓する、ことこそが、持続化補助金の目的です。
③補助事業計画の有効性
○補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
○地道な販路開拓を目指すものとして、補助事業計画は、経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要かつ有効なものか。(共同申請の場合:補助事業計画が、全ての共同事業者における、それぞれの経営計画の今後の方針・目標を達成するために必要か。)
○補助事業計画に小規模事業者ならではの創意工夫の特徴があるか。
○補助事業計画には、ITを有効に活用する取り組みが見られるか。
「補助事業計画は具体的」となっていますので、きちんと数値的根拠を示したり、具体的な書き方が求められています。
「当該小規模事業者にとって実現可能性が高いもの」は、組織規模や財務状況から判断されると考えられます。
採点者の思い込みで「これはできないだろう」と判断されないように、こちらも数値的根拠や具体的に計画書を作成する必要があります。
事業計画を抽象的でなく、具体的に書く必要があります。具体的にとは、読んだ人、すなわち審査員が具体的にイメージできるように、数字であったり名称であったりを使うことです。
そして、審査員が「この計画はできそうだな」と思わせることです。
私が補助事業計画を書くとき、ストーリーに一貫性があるか、読んでいて引っかからないかを意識しています。
また、“地道”な販路開拓とここでも書かれていますので、地道な取り組みであることを伝えなければいけません。
「地道な販路開拓を目指すもの」なので、一発逆転的なものではダメですよ?ということでしょうか。小規模事業者はコツコツと販路開拓をしなさいと読めますね。
お金を使って1回だけ広告を打てば万事OK、みたいなことはダメということです。
審査員(おそらく中小企業診断士)もそんなに事業が甘くないと分かっていますので、甘い希望的観測ばっかりでは点が入りづらいでしょう。
「必要かつ有効なもの」は、「これが認められないと困ります」とも言えます。必要性をしっかりと認識してもらう必要があります。
小規模事業者ならではの創意工夫とは、そこそこの規模のある中企業以上ではできないことです。
小規模事業者=人数が少ない事業者ですので、少人数だからこそできること、少人数だからこそ知恵を絞った取組み、が求められています。
「小規模事業者だからできる」裏を返せば「中・大企業ではできないこと」と言えます。
また「大企業のマネではない」ことです。
セオリーで言えば、「きめ細やかさ」や「柔軟な対応」的なことです。
近年は中小企業庁も中小企業のIT化、DX化を進めています。
そのため、ITの活用した取り組みを優遇しようという現れです。
小規模事業者だからこそ、ITを使った取り組みで生産性を高める必要があるとも言えます。
少ない人員でもITの力を借りて事業を成功に導くストーリーであれば、文句はないでしょう。
④積算の透明・適切性
○補助事業計画に合致した事業実施に必要なものとなっているか。
○事業費の計上・積算が正確・明確で、真に必要な金額が計上されているか。
難しく書いていますが、計算間違いがなく、わかりやすく、妥当性ある数値になっているかという事です。
やはり計画書ですので、数値の正確性や根拠の妥当性は求められます。
しかしながら、ここをしっかりと組み立てられる人もそう多くはありません。
大事なのは、数字合わせでなく妥当性があるかどうか、です。
この部分の作り込みができていれば、それだけで好印象となります。
やることをてんこ盛りに書いていても、いったい「いつ・だれが・どのように」実行するのかがあやふやだと、補助事業の遂行力に疑問符が付きます。
ここはスケジュールと担当を明記して、どのように実行するかを書ければ良いでしょう。
また、事業のプランだけは立派でも数字に落とし込めていなければ、経営計画、補助事業計画とは言えません。
積算の根拠、売上でいえばせめて単価と数量を示す、費用であれば具体的にかかる経費を計算する、などが必要となります。
積算根拠の乏しい事業計画だと、いくら素晴らしいビジョンで革新的な取組を書かれていても、一気に信憑性が落ちてしまいます。
数字が苦手な経営者の人は意外と多いですが、ここはしっかりと向き合って積算しましょう。
Ⅲ.政策加点審査
加点を取りに行く場合、しっかりと記載しましょう。
今回では、7つの加点項目があります。
①パワーアップ型加点
以下の類型に即した事業計画を策定している事業者に対して、政策的観点から加点を行います。
○地域資源型
地域資源等を活用し、良いモノ・サービスを高く提供し、付加価値向上を図るため、地域外への販売や新規事業の立ち上げを行う計画
○地域コミュニティ型
地域の課題解決や暮らしの実需に応えるサービスを提供する小規模事業者による、地域内の需要喚起を目的とした取組等を行う計画
7つある加点項目の中でも、比較的取りやすい加点になると思います。
地域資源型は、有形無形のものがあると思います。
活用することができれば書きやすい加点です。
地域コミュニティ型は、地域の課題解決、暮らしの実需のニーズにこたえると、すでに地域で存在することに対しての新事業なので、地域に根差した取り組みをしたい事業者にとってはいい加点かと思います。
②赤字賃上げ加点
賃金引上げ枠に申請する事業者のうち、赤字である事業者(P.8の「業績が赤字の事業者に対する要件」を確認ください)に対して、採択審査時に政策的観点から加点(=赤字賃上げ加点)を行います。
赤字の事業者が賃上げをして加点されます。
元々賃上げの予定がある、賃上げをしなければ事業が立ち行かないなどの理由であれば活用しやすいですが、わざわざ加点狙いのために賃上げをすることには慎重に検討をしたほうが良いでしょう。
③経営力向上計画加点
各受付締切回の基準日(別紙「参考資料」の P.9を参照)までに、中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定を受けている事業者に対して、採択審査時に政策的観点から加点(=経営力向上計画加点)を行います。
こちらは経営力向上計画の認定をすでに受けている必要があるので、認定を受けていない事業者にとっては利用できない加点です。
④電子申請加点
補助金申請システム(名称:J グランツ)を用いて電子申請を行った事業者に対して、採択審査時に政策的観点から加点(=電子申請加点)を行います。
この加点はぜひ狙いましょう。
電子申請で楽ですし、誰でも加点できます。
逆に言えば、この項目で加点できなければ他者と比べて不利な状況になります。
商工会、商工会議所の力を借りてでもぜひ電子申請に取組みましょう。
⑤事業承継加点
各受付締切回の基準日(別紙「参考資料」の P.9を参照)時点の代表者の年齢が満60歳以上の事業者で、かつ、後継者候補が補助事業を中心になって行う場合、採択審査時に政策的観点から加点(=事業承継加点)を行います。
こちらも要件に当てはまって入れば加点が取りやすい加点です。
事業承継も中小企業庁の課題となっていますので、後押しするための加点です。
⑥東日本大震災加点
東京電力福島第一原子力発電所の影響を受け、引き続き厳しい事業環境下にある事業者に対して、政策的観点から加点(=東日本大震災加点)を行います。
こちらも要件に当てはまっていれば加点されます。
原子力事故の影響は、事故から10年たっても政策的観点から優遇する必要があるとの判断と思われます。
⑦過疎地域加点
過疎地域という極めて厳しい経営環境の中で販路開拓等に取り組む事業者を重点支援する観点から、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に定める過疎地域に所在し、地域経済の持続的発展につながる取り組みを行う事業者に対して、採択審査時に政策的観点から加点(=過疎地域加点)を行います。
事業を実施する場所が過疎地域に定められていれば加点が付きます。
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/2001/kaso/kasomain0.htm
経営計画と補助事業計画は最大8枚程度にまとめる
様式2には、<経営計画>及び<補助事業計画>(Ⅱ.経費明細表、Ⅲ.資金調達方法を除く)は最大 8 枚程度までと記載されています。
“程度”となっているので、9枚でも問題ないでしょうが、多くなりすぎると審査員の印象を損ないかねないリスクがあります。
読み手の立場に立って、簡潔に分かりやすく書くことが求められます。
さいごに
小規模事業者持続化補助金は、経済産業省中小企業庁の補助金の入門的なものです。
補助金の初級編と言っても良いでしょう。
小規模事業者持続化補助金計画書作成の際に注意するポイントをまとめました。
たくさんありそうで、しかし、分解して見ると求められていることがわかったと思います。
要は、採点者に理解してもらうこと、自社の事をしっかりと分析できていること、販路拡大策が納得してもらえること、そして、数字的におかしくないこと、の4つです。
経営者の方は日々の仕事で忙しいと思いますが、補助金が仮に採択されなくても、計画書を作ることは必ず今後の経営に役立つものと思います。
補助事業の書き方を学ぶには丁度いい練習になります。
近年では通年で募集がありますので、タイミングのよいときに合わせて補助金申請にチャレンジしてみましょう。
中小企業診断士/ファイナンシャルプランニング技能士2級/全経簿記上級
神戸市出身
中小企業3社(食品製造・アパレル)で約20年間財務経理部門を担当。2017年に中小企業診断士として独立。2020年株式会社ノーティカル設立。
事業計画・資金計画の立案から金融機関折衝や資金調達、計画実行支援を中心に、経営改善や新規事業支援を行う。
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