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【融資】経営者保証改革プログラムで借入時の経営者保証はどうなる?

【融資】経営者保証改革プログラムで借入時の経営者保証はどうなる?

投稿日 2023.01.17 最終更新日 2024.10.28

2022年12月23日に、経済産業省・金融庁・財務省による連携の下、経営者保証改革プログラムが策定されました。

要請文には、内閣総理大臣、財務大臣兼金融担当大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣名で出されてています。

 

経営者保証改革プログラムとはどのようなものか、経営者保証改革プログラム概要紙に沿ってみていきたいと思います。

 

経営・資金繰り改善

経営者保証改革プログラムとは

まずは下記引用文から

経営者保証は 、 経営の規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で 、 スタートアップの創業や経営者による思い切った事業展開を躊躇させる 、 円滑な事業承継や早期の事業再生を阻害する要因となっているなど 、 様々な課題も存在する 。

このような課題の解消に向け 、 これまでも経営者保証を提供することなく資金調達を受ける場合の要件等を定めたガイドライン 経営者保証ガイドライン の活用促進等の取組を 進めてきたが 、 経営者保証に依存しない融資慣行の確立を更に加速 させるため 、 経済産業省 ・ 金融庁 ・ 財務省による連携の下 、 ① スタートアップ ・ 創業 、 ② 民間融資 、 ③ 信用保証付融資 、 ④ 中小企業のガバナンス 、 の4分野に重点的に取り組む 「 経営者保証改革プログラム 」 を策定 ・ 実行 していく 。

(参照:経営者保証改革プログラム概要紙より)

となっています。

簡単にまとめると、「創業時、新事業展開、事業承継、事業再生に経営者保証は阻害する要因である」と国は考えており、課題を解消するために経営者保証に依存しない融資慣行を確立し、加速させたいとのことです。

そしてこの度、経営者保証改革プログラムが策定されました。

 

ちなみに経営者保証に依存しない融資の推進は、すでに2013年12月には全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン」策定していますが、9年間で想定通りに進まなかったことを受けて改革プログラムを策定したものと思われます。

【融資】経営者保証に関するガイドラインに沿って社長の個人保証を外す方法

 

個人的な感覚とすれば、これまで経営者保証は何も言わなければ当たり前につけられるものであり、よほど業績が良くなければ外せないものと認識されていたのではと思います。

むしろ経営者の方は外せないと思い込んでいる部分はあるのではないでしょうか。

 

また貸し手側である金融機関の意見としても、「中小企業は経営と個人は一体であるので、経営者保証は当然」とした感じでもありました。

さらには、業務量が増加しているにもかかわらず人手が足りない状況から、事業評価をするのも困難であり、経営状況を逐次モニタリングするのも難しいため、「経営者保証を付ければ真剣に経営をするだろう」といった部分もあると考えます。

実際の現場では、経営者保証に関するガイドラインが策定されたのちに、業績の良い会社に対しては経営者保証を外す動きがありました。

しかしながら、国の思惑通りに経営者保証を必要ない融資が進んでいないとのことから、経営者保証改革プログラムが策定されたものと推測します。

 

1.スタートアップ・創業~経営者保証を徴求しないスタートアップ・創業融資の促進~

創業時の融資において経営者保証を求める慣行が創業意欲の阻害要因となっている可能性を踏まえ、起業家が経営者保証を提供せず資金調達が可能となる道を拓くべく、経営者保証を徴求しないスタートアップ・創業融資を促進。

  1. スタートアップの創業から5年以内の者に対する経営者保証を徴求しない新しい信用保証制度の創設(保証割合:100%/保証上限額:3500万円/無担保)【相談受付開始:23年2月、制度開始:23年3月】(※)創業関連保証の利用実績:11,153件(2021年度:法人)
  2. 日本公庫等における創業から5年以内の者に対する経営者保証を求めない制度の要件緩和【23年2月~】(※)創業から5年以内の者に対する経営者保証を求めない融資の実績:約1.6万件(2021年度)
  3. 商工中金のスタートアップ向け融資における経営者保証の原則廃止【22年10月~】(※)スタートアップ向け融資の実績:202件(2021年度)
  4. 民間金融機関に対し、経営者保証を徴求しないスタートアップ向け融資を促進する旨を要請【年内】

(参照:経営者保証改革プログラム概要紙より)

こちらは国が”経営者保証を求める慣行が創業意欲の阻害要因”となっているので経営者保証をとるのはやめて。といったことを明文化したものです。

すでに日本政策金融公庫には新創業融資制度があります。

新創業融資制度は融資限度額が3000万円のため、一つはもっと資金が必要なベンチャー企業の後押しといった側面があるのかなと思います。もう一つは、公庫の新創業融資は2期までなのでそれを5年に延ばすことが目的です。

実際に創業時の融資は創業前が一番ハードルが低く、その後実績評価となります。そのため、5年に伸びたところで、恩恵を受けやすいのはすでに業績が出せている、もしくは、現段階ではまだだがかなり有望な事業に取り組んでいるなどの事業者と思われます。

 

2.民間金融機関による融資~保証徴求手続の厳格化、意識改革~

・監督指針の改正を行い、保証を徴求する際の手続きを厳格化することで、安易な個人保証に依存した融資を抑制するとともに、事業者・保証人の納得感を向上させる。

・また、「経営者保証ガイドラインの浸透・定着に向けた取組方針」の作成、公表の要請等を通じ、経営者保証に依存しない新たな融資慣行の確立に向けた意識改革を進める。

(1)金融機関が個人保証を徴求する手続きに対する監督強化

  1. 金融機関が経営者等と個人保証契約を締結する場合には、保証契約の必要性等に関し、事業者・保証人に対して個別具体的に以下の説明をすることを求めるとともに、その結果等を記録することを求める。【23年4月~】➢どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか➢どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか
  2. ①の結果等を記録した件数を金融庁に報告することを求める。【23年9月期実績報告分より】(※)「無保証融資件数」+「有保証融資で、適切な説明を行い、記録した件数」=100%を目指す。
  3. 金融庁に経営者保証専用相談窓口を設置し、事業者等から「金融機関から経営者保証に関する適切な説明がない」などの相談を受け付ける。【23年4月~】
  4. 状況に応じて、金融機関に対して特別ヒアリングを実施。

(2)経営者保証に依存しない新たな融資慣行の確立に向けた意識改革(取組方針の公表促進、現場への周知徹底)

  1. 金融機関に対し、「経営者保証に関するガイドラインを浸透・定着させるための取組方針」を経営トップを交え検討・作成し、公表するよう金融担当大臣より要請。
  2. 地域金融機関の営業現場の担当者も含め、監督指針改正に伴う新しい運用や経営者保証に依存しない融資慣行の確立の重要性等を十分に理解してもらうべく、金融機関・事業者向けの説明会を全国で実施。【23年1月~】
  3. 金融機関の有効な取組みを取りまとめた「組織的事例集」の更なる拡充及び横展開を実施。

(3)経営者保証に依存しない新たな融資手法の検討(事業成長担保権(仮))

  1. 金融機関が、不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、企業の事業性に着目した融資に取り組みやすくするよう、事業全体を担保に金融機関から資金を調達できる制度の早期実現に向けた議論を進めていく。【22年11月~】

(参照:経営者保証改革プログラム概要紙より)

 

この記載で面白いなと思ったのは「納得感」を向上させるとの部分です。あくまでも納得すればOKということと言え、その説明責任をもっとしっかりと果しなさいよということかなと思います。

また、「➢どの部分が十分ではないために保証契約が必要となるのか」「➢どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか」は良い取り組みと思います。

経営者にとっても一つの目安ができるので、具体的努力目標ができると言えます。

 

現場の支店長に聞いてみたところ「わかりやすい目安は、債務償還年数でしょう。キャッシュフローで10年返済できるようになるのを一つの目標にしてもらえれば。」と言ってました。

当然そのほかにもいろんな指標もありますし企業の個々の状況にもよりますが、債務償還年数というのは現場でも重要視している目安の一つと言えます。

 

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3.信用保証付融資~経営者保証の提供を選択できる環境の整備(希望しない経営者保証の縮小)~

・経営者保証ガイドラインの要件(①法人・個人の資産分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性確保)を充たしていれば経営者保証を解除する現在の取組を徹底。

・その上で、経営者保証ガイドラインの要件のすべてを充足していない場合でも、経営者保証の機能を代替する手法(保証料の上乗せ、流動資産担保)を用いることで、経営者保証の解除を事業者が選択できる制度を創設。

・中小企業金融全体における経営者保証に依存しない融資慣行の確立に道筋を付けるため、信用保証制度で一歩前に出た取組を行う。

(1)信用保証制度における経営者保証の提供を事業者が選択できる環境の整備

  1. 経営者の取組次第で達成可能な要件(法人から代表者への貸付等がないこと、決算書類等を金融機関に定期的に提出していること等)を充足すれば、保証料の上乗せ負担(事業者の経営状態に応じて上乗せ負担は変動)により経営者保証の解除を選択できる信用保証制度の創設【24年4月~】(※)無担保保険の利用件数:40万件、経営者保証徴求比率92%(ともに2021年度(法人)
  2. 流動資産(売掛債権、棚卸資産)を担保とする融資(ABL)に対する信用保証制度において、経営者保証の徴求を廃止【24年4月~】
  3. 信用収縮の防止や民間における取組浸透を目的に、プロパー融資における経営者保証の解除等を条件に、プロパー融資の一部に限り、借換を例外的に認める保証制度(プロパー借換保証)の時限的創設【24年4月~】
  4. 上記施策の効果検証を踏まえた更なる取組拡大の検討【順次】等

(2)経営者保証ガイドラインの要件を充足する場合の経営者保証解除の徹底

  1. 金融機関に対し、信用保証付融資を行う場合には、経営者保証を解除することができる現行制度の活用を検討するよう経済産業大臣・金融担当大臣から要請。【年内】
  2. 保証付融資が原則として経営者保証が必要であるかのような誤解が生じない広報の展開。【年内】

(参照:経営者保証改革プログラム概要紙より)

 

業績がいい企業は金融機関からのプロパー融資が受けられると思いますが、近年では保証協会付き融資を受けることが多いのではと思います。

そして現状では多くの場合、保証協会からの保証を受けるには代表者保証が求められます。

そのため、この項目では保証協会付き融資に関しても、代表者保証を取らなくて済む道筋を示しています。

 

基本的には経営者保証ガイドラインの3要件(①法人・個人の資産分離、②財務基盤の強化、③経営の透明性確保)を満たすことになります。

経営者保証ガイドラインの3要件とは

  • 資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者が明確に区分・分離されている
  • 財務基盤が強化されており、法人のみの資産や収益力で返済が可能である
  • 金融機関に対し、適時適切に財務情報が開示されている

となります。

経営者保証ガイドラインの要件のすべてを満たせていなくても、保証料の上乗せ、流動資産担保などを用いれば経営者保証の解除を事業者が選択できるとなっています。

 

4.中小企業のガバナンス~ガバナンス体制の整備を通じた持続的な企業価値向上の実現~

・経営者保証解除の前提となるガバナンスに関する中小企業経営者と支援機関の目線合わせを図るとともに、支援機関向けの実務指針の策定や中小企業活性化協議会の機能強化を行い、官民による支援態勢を構築。

  1. ガバナンス体制整備に関する経営者と支援機関の目線合わせのチェックシートの作成【22年12月】
  2. 中小企業の収益力改善やガバナンス体制整備支援等に関する実務指針の策定【22年12月】、収益力改善やガバナンス体制の整備を目的とする支援策(経営改善計画策定支援・早期経営改善計画策定支援)における支援機関の遵守促進【23年4月~】(※)年間計画策定支援件数:2,821件(2021年度)
  3. 中小企業活性化協議会における収益力改善支援にガバナンス体制整備支援を追加し、それに対応するため体制を拡充【23年4月~】等

経営者保証を必要としない融資に向けたガバナンス体制や実務指針、支援体制整備を進めるとなっています。

どのようなものになるのかは2023.1.16現在ではわかりませんが、徐々に公表されていくものと思われます。

 

経営者保証解除を経営目標にする

経営者保証に頼らない融資を国は進める方針をさらに固めました。

実際のところ、現場レベルでは事業性評価による融資は時間と能力の問題で簡単には進んでいません。

ですが、指針が示されることで事業者側としても具体的な目標を立てやすくなると考えます。

 

一方で、数値目標だけではなく金融機関は経営者の資質もかなり重視しています。

これは地域密着型の金融機関になるほど重視している印象です。

しっかりしている印象を持ってもらうには、日々の資料をしっかりそろえ数字で語れるようになることや、金融機関への報告をおこない経営内容を知ってもらうことです。

 

経営者保証の必要ない融資が受けられる段階は、企業としても優秀である一つの証明になります。

また事業承継もよりスムーズに進む可能性が高くなります。

事業売却においてもプラスに働くでしょう。

 

経営者保証の解除を経営目標の一つに掲げるのもひとつです。

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