ブログ

業績が悪化し始めたとき、最初に取り組むべきこと

業績悪化時、何から手を付けるべきか──。
元・経理出身の支援者が語る、実務視点の経費見直しステップ。
「順番を間違えない」ための実践的な考え方をまとめました。
──まず「支出の見直し」から整える理由
経営を続けていれば、誰しも一度は「業績の悪化」に直面することがあります。
売上が減少したり、原価や固定費が増加したりして、資金繰りが厳しくなる――。
そのとき、多くの方が真っ先に「売上を上げよう」「借入でつなごう」と考えがちです。
もちろん、それも重要な対応策の一つです。
けれども本当にまず着手すべきは、「支出の見直し」、つまり“バケツの穴をふさぐ”ことです。
1.支出の見直しは「順番」が大切です
経費削減といっても、やみくもに進めると現場が疲弊し、逆効果になることもあります。
大切なのは、「何から削るか」という順番です。
順を追って、効果的かつ納得感のある方法で取り組むことで、経営全体の再建力が高まります。
① 質を落とさず見直せるものから着手する
まずは、「サービスの質を落とさずにコストを削減できるもの」から取り組みます。
具体的には、以下のような項目です
-
水道光熱費・通信費などの契約先の見直し
-
使っていない保険の解約や見直し
-
同等品質でより安価な購買先の選定
これらは「代替が利く支出」であり、利用者(社員や顧客)の満足度を損なわずにコストカットが可能です。
なぜ最初にここから始めるかというと、社員の不満を最小限に抑えつつ、経営改善の第一歩を踏み出せるからです。
② 業務の無駄を見直し、残業を減らす
次に着手すべきは、「業務の見直しによる無駄の削減」です。
特に、残業代をしっかり支払っている会社では、大きな効果が見込めます。
注意すべきは、「上からの一方的な残業禁止」は避けること。
多くの社員は、自身の業務に無駄があるとは思っていません。
ですから、業務プロセスを可視化し、どこに滞りがあるのかを一緒に探るアプローチが必要です。
フローチャートの作成や、業務の棚卸しを通じて、「やらなくていい仕事」を見つけ出し、シンプルに再設計していきます。
③ 経営者自身の「聖域」をなくす
忘れてはならないのが、経営者自身の姿勢の見直しです。
ファミリービジネスでは、公私混同が起きやすい構造があります。
経営が順調なときには目をつぶられていたことも、業績が落ち込んだ瞬間に矛先が経営者に向かいます。
-
タクシー移動やグリーン車利用
-
私用車の社用車扱い
-
自宅を社宅にする処理
-
日常の飲食費を交際費で処理する など…
こうした「経営者だけの特権」は、社員の信頼を揺るがす要因にもなります。
まずは経営者が模範を示すこと。ルールを明確にし、納得できるかたちで社内と共有することが大切です。
2.「より踏み込んだ経費削減」に進むときは
一次対応でも改善が見込めない場合は、さらに踏み込んだ対策が必要になります。
ここでは、よりセンシティブな内容を扱うため、社員の理解と納得を得ながら進めることが前提です。
① 賞与カット(役職者ほど大きく)
賞与カットは最終手段ですが、緊急度が高い場合は検討対象となります。
ただし、説明不足のまま進めると社員の不信感を招くため、次のような配慮が重要です:
-
「いつまでに戻すか」を明確にする
-
役職に応じた差をつけ、上位者の削減割合を大きくする
-
評価制度と連動させ、納得感を担保する
② 役員報酬の見直し
役員報酬のカットも当然ながら必要です。
ただし、法人税法上の制約があるため、手続きには注意が必要です。
支払いを一時停止し「未払金」として計上するなど、税理士に相談しながら対応してください。
③ 家賃や倉庫の見直し
家賃は「固定費」ゆえに、大きな改善インパクトがあります。
-
家主との家賃交渉
-
オフィス縮小・別フロアへの移転
-
安価な物件への引っ越し
-
不良在庫の処分と倉庫費用の削減 など
一時的な出費を伴うケースもありますが、中長期的な視点で検討する価値があります。
④ 細かな経費は「全体設計」で
コピー用紙や文房具などの細かな支出も見直す価値はありますが、従業員のモチベーションを損なわない運用がカギです。
-
一律の禁止より「総量規制」で運用
-
デジタル活用や書類削減などの仕組み整備
-
効果金額を見える化し、成果を共有する
3.支出削減と並行して、売上の見直しも進める
支出削減だけで経営が再建できるわけではありません。
同時に「売上をどう取り戻すか」も検討が必要です。
売上=数量 × 単価
売上=既存顧客売上 + 新規顧客売上
こうした分解を行い、施策を整理していきます。
注意点としては、売上施策は成果が出るまで時間がかかるため、焦らず計画的に進めること。
社員とも進捗を共有し、方向性のズレが起きないように留意しましょう。
最後に:希望を持てる経営を
業績が悪化すると、社内はどうしても暗くなりがちです。
こんなときこそ、「希望を持てる再建計画」が経営者の役割になります。
社員は「この会社で働き続けて大丈夫か」を常に見ています。
だからこそ、制度や数字だけでなく、信頼と納得の土台を整えながら、再建に取り組むことが大切です。
お問い合わせ
Contact
- Webでのお問い合わせはこちら
- お問い合わせフォーム 24時間年中受付中